3月.春分の日
今日のロボットは、暇あらば外に出ている。
外で、何をするでもない。ただ、立っている。
呼ばれれば返事をするし、出動要請があれば動き出すため放っておかれているが、明らかに異常である。
もうすぐ陽が沈みきる。嶋本は、しびれを切らした。
「隊長、なんや知りませんけど、まだ気がすみませんか」
「……質問がわからない」
ロボットのこの答えに、嶋本自身が平生でないことを思い知らされた。なんや知りませんけど、なんて、そんな前置き、ロボットにだってわからない。
「今日、しょっちゅう外出てますけど、何してはるんですか。まだ終わりませんか?」
「今日は、自然を称え、生物を慈しむ日だそうだ」
「そうなんですか?」
「春分の日は、そういう日らしい」
「へぇ、知りませんでした」
「だから、外に出ていた」
「ふぅん……」
「どうしたら、称えられるのか。どうしたら、慈しめるのか。わかることはできないだろうかと」
「へぇ」
「外に出てみたが、一向にわからない」
ロボットのその答えに、嶋本は盛大に笑った。
そして、嶋本のその笑い声に、なんだなんだと、他の隊員達も外に出てきた。ちょうどいいとばかりに嶋本は皆に話を振る。
「小鉄! 春分の日って何の日?」
「え……。昼と夜が同じ日?」
「高嶺、自然の称え方、生物の慈しみ方、知っとる?」
「それは……どうしたら良いんでしょうね?」
「ね。みんなわからへんのですよ。なんでよりによってそれを自力でわかろうとしてんですか」
聞くと、ロボットは僅かに拗ねたような顔になって。
「俺は、生物ではないから」
ぽつりと答えた。
「ヒトは皆わかっているものだと思っていた。それを聞くことはなんだか悔しかった」
「そんなん、こっちのが悔しいですよ!」
嶋本は明るく、だけど顔はしかめて言った。
「俺らだってわかっときたいですよ? わかるもんならわかりたいです。でも、わからへんし、きっと、『こうです』って教えられるもんでもないです。それを、何、ロボがわかろうとしてんですか。そういうの、抜け駆けって言うんですよ!」
「……すまん」
謝ったロボットに、隊員達から笑いが零れた。
「いつか、答えが見つかるといいですね」
嶋本が言った。
「さっきわからないと言った」
ロボットがすかさず突っ込む。
「だって、わかりそうな気はしますもん。やから真田さんもわかろうとしとったんでしょ?」
「……そうなのだろうか」
「そうやと思いますよ。幸い俺たちは、自然を相手に命を救う仕事しとりますからね。せっかくやから、答え、探してみましょう」
嶋本の言葉に、隊員達もうなずく。それを見て、ロボットもうなずいた。
「うん」
いつの間にか辺りは暗くなっていた。
ロボットの頭上に、オリオン座が輝いていた。
