真田さんがインドネシアに行ってから半年。
肌は焼け、髪が伸び、髭も伸び放題の写真が送られてきたときはびっくりしたが、多分、今の方が驚いている。
真田さんがどんどん遠い人になってまう。と、本気で心配になった。
ここ1ヶ月ほど音沙汰が無く、元気にやっているか心配はしていた。だからこのタイミングで来たメールには酷く安堵した。なのに。
……なんやねんこれ。
本文を読んで、どう反応するのが一番正しいのか、全然わからないのだ。突っ込みどころが満載で、というよりは、突っ込まずにいられるところなどなくて、流石の嶋本もお手上げなのだ。
『眉間のしわが素敵な嶋本様へ
あなたのハートを指名手配中の真田です。
嶋本様はまるで保険金目的の魚介類のように上品ですね!
あなたを思うと岩陰でおママゴトがしたくなります。
嶋本様のためなら、地平線のかなたで針に糸を通しつつトラを生け捕りにすることもできます。
「真田さんの青春って茶碗蒸みたいですね」と無邪気に笑う嶋本様の横顔が忘れられません。
真田より
PS.地面から出てきてください。』
『眉間のしわが素敵な嶋本様』は、まあええわ。様が付いてるんが気になるけど。
『ハートを指名手配中』って……俺とっくに捕まってるつもりやってんけどな。俺一人で舞いあがってただけで真田さん本気やなかったんかな……。まあ、好かれてることにはかわりないみたいやから気にせんどこ。
『保険金目的の魚介類』ってなんやねん。保険金目的の魚介類が上品やなんて知らんかったわ。流石、確認できてるだけで3ヶ国語喋れてるからな。きっとお魚さんとも会話できるねん、あのお人は。せやから彼等がいかに上品かも知ってはんねや。なんせ神に遣われし兵やからな。朝飯前に違いない。せや。きっとそうや。
『岩陰でおママゴト』ってどういうシチュエーションやねん!!しかも俺を思うと、やろ!?どうゆうこと?……試しに俺も真田さんを思ってみよ。…………ああ!あかん。顔がにやける。……そら俺も、なんでたまたま好きになったのが同性なんやろ、とか、なんで俺女じゃないねやろ、とか思うで?思うよ!そんくらい本気や!!……けど、真田さんオママゴトのつもりなんかな。てか、そもそも一行目からそっけないやん!ぇえ、嘘やん。めっちゃショック。
ああでも、せやなかったら、こんな意味不明なこと言われへんよな?なんやねん『地平線の彼方で〜』って!!真田さんの青春を茶碗蒸扱いしたことも無いわ!……でも多分これ俺が笑顔で言ってショック受けたから忘れられへんねんな。ええ〜、俺そんなんゆうたかな。いや、絶対ゆうてない!!
嫌がらせか?嫌がらせや!絶対嫌がらせや!!このPSが物語ってる!俺地面に潜ったことなんてないもん!
…………。
でもほんま、急にどないしたんやろ。きっと何かあってんやろな。きっとこれはSOSや!俺がきれてる場合やないやんな。しっかり受け止めなあかんよな。
よっしゃ!愛する真田さんのためや!!返事せな!!……心配させへんためにこんなノリでメール寄越したんかもしれんし、ノリだけあわせとこ。
『ああ真田様、真田様、真田様・・・
切なすぎて白骨化しそうな嶋本です。
真田様はまるで波打ち際の目覚し時計のようにアメリカンジョークがお上手ですね。
あなたを思うと岩陰で過労死しそうです。
真田様のためなら、犬小屋の中で丸太を転がしつつ追い越し車線を逆走できます。
「嶋本さんの眼差しってコソドロみたいですね」と無邪気に笑う真田様の横顔が忘れられません。
嶋本より
PS.もう武装解除してください。』
(終わる。)
だってこんなの見つけたらやらないわけにはいかないですよね。
