愛しい

 

「盤君、盤君見て! 雪だよ!!」
 窓にへばり付いて外を眺めていた兵悟が叫んだ。
「雪が何ね。そげん珍しいもんでもなかろう?」
 しかし返ってきたのはそっけない返事で、振り返ってみれば盤は相変わらず窓に背を向けて横になっていて。
「なんだよ、死に際のブッダみたいな体勢して」
「ブッダぁ!?」
「あはは。こっち向いた」
 思わず体を起こし振り返った盤は、軽く舌打ちをして立ち上がった。
「兵悟君にしてやられるとはね」
 言いながら兵悟のもとへと歩み寄る。
 たったの四歩が酷く煩わしい。
 肩をつかみ、必要以上に顔を近づければ、可愛い恋人はふいと顔を背ける。そんな初々しさがまたたまらない。
「あんな変な頭とオイを一緒にせんでくれんね」
「め、盤君も十分変な頭してると思うけど」
「こいはオシャレばい」
 そう言って口づけると、手のひら越しに兵悟の緊張が伝わってきて、たまらなく愛おしくなった。ぎゅっと抱きしめると、おずおずと背中に手が回ってきた。
 ちょっとしゃくだけど、身長差がなくて良かった。すぐ横にある耳に言葉を吹き込む。

 その返事は、「俺も」。

 ああ、愛しさは募るばかり。


(おわれ)

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