お題2.届かない

 

 いつからか、適わないことが、悔しいだけじゃなく嬉しくなっていて。
「、あー! 敵わへん!!」
 だけど、それを相手に知られるのは、それはそれでしゃくで。喉元まで出かかった「やっぱり敵わへんなぁー」の言い方を、慌てて変える。
 なのに、目標とするところの人は、けろりと言い放つのだ。
「やっぱり、嶋本には敵わないな」
 それも、とびきりの笑顔付きで。
 ……眩しい。
「嬉しそうに、勝った人が何を言いますか」
「あはは」
 俺に勝ったことがそんなに嬉しいか。
 そうか。それは、悪い気がしない。
「もっと、もっと、精進しないと。追い抜かされて、置いてけぼりをくらいそうだ」
「だから、どの口が言うてんですか」
 追い抜くだけじゃ飽き足らず、置いていくなんて。そんなこと、あり得ないのに。

 届かない背中。
 届きたい背中。
 届きたくないような気もする背中。

 だけどやっぱり。いつか、胸を張って横に並べる日が来たら。
 これ以上素晴らしいことは無いんじゃないかと思う。


届きたくない背中


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