お題74.クイズ

 

 昼休憩中、佐々木がトイレに行っている間に、大口が嶋本に10回クイズを出したようだった。
「〜、シャンデリア、シャンデリア、シャンデリア!」
「毒りんごを食べたのは?」
「白雪姫」
「ブブー! ……って、なんで正解しちゃうんですか! つまんない!」
 ぶうたれる大口に対し、嶋本は余裕の笑みだ。「ほな次俺な」
 ターン制らしい。佐々木は観戦することにした。
「じゃあ、ピッツァって、10回言って」
「え、ピザじゃなくてピッツァですか?」
 ピッツァとは無駄に発音が良い。しか嶋本が「おお」と答えたので、大口は従った。
「じゃあ……。ピッツァピッツァピッツァピッツァピッツァピッツァピッツァピッツァピッツァピッツァ!」
「よし。じゃあ、これは?」
 嶋本は、左手で右腕の肘を指さした。その動作が不自然なものではあったが、大口は自信満々に即答した。
「肘!」
「ブー! 正解はエルボーでーす!」
 言って嶋本は大口を押し倒し、エルボー(肘打ち)を繰り出す真似ごとをした。エルボーは危険なので、嶋本は大口に乗り上げて他の寝技をかけた。
「いた! 痛い!! ちょ! 普通答えは肘でしょ!」
 大口は暴れて逃れようとするが、なかなか抜け出せない。
「俺、ここは? 言うてへんし! これは? って言うて動き見せたし〜」
 あの不自然な動作はそういうことだったのだ。気付いていただけに、大口は何も反論できない。
「う〜……」
「嶋本さん、その辺で良いんじゃないですか?」
 佐々木は見かねて口を挟んだ。嶋本は大人げないし、大口はなんだかんだ楽しそうにしているし、気に入らない。
「これから楽しくなるところやん〜」
「小鉄さん! 助けて!!」
 大口の両手が佐々木へと伸ばされる。佐々木はその手の片方を取り、空いている手を嶋本の肩に置いた。すると、以外にもすんなりと嶋本は大口から離れた。しかしそれでもまだ嶋本は楽しそうで。
「ほな次、小鉄から大口な」
 と、ターゲットを増やした。
 面白くない。
 尚も大口が楽しそうにしていることが面白くない佐々木は、少し考えて、言った。
「すきって10回言って」
「すきすきすきすきすきすきすきすきすきすき!」
 すぐに言い終えて、大口は得意げにクイズを待つ。しかし佐々木は何も言わない。
「えー、何? 10回言ったでしょ? すきすきすきすきすきすきすきすきすきすき!」
 指折り数えて再び言った大口に、嶋本は吹き出した。
「お前、恥ずかしくないんか?」
「え?」
 気付けば、佐々木は珍しくニヤニヤし、さらには周囲の視線が大口に集中していた。
「ええ〜!? もう、ええ〜!!」
 大口が盛大に恥ずかしがったところで、佐々木は口を開いた。
「ありがとう」
「なんすか、それー!」
「じゃあ、キスの方が良いか?」
「きー!! 小鉄さんのくせに! 小鉄さんにしてやられるなんて!!」
 その大口の様子に、周囲は笑いに包まれた。

 業務が終了して、佐々木と大口は、二人車で官舎へ戻る。
「小鉄さん。ごめんなさいって10回言って」
 運転中では暴れることもできない。10回クイズだろう。佐々木は疑わなかった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「そんなに言うんだったら、昼間のこと許してあげますっ」
 そう言う大口はまだ口を少し尖らせていて。佐々木は普段いじられる側だから、なんだかとても気分が良い。
「いつもうるさく言ってくる癖に」
「うるさいとは何ですか! だって小鉄さんそっけないんだもん!」
「ありがとうって言ったろ」
「あんな人前で言われても、エッチに突入できんでしょうが!」
「……」
「キスだけじゃ嫌ですよ」
「……おう、」
 あっという間に大口のペースに戻ってしまったが、もちろん佐々木はまんざらでもなかった。

 好きだけじゃ嫌

 

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