なリス 9
おかしい。
おかしいで。
俺は外に、世界に、飛び出して行ったはずや。
うん。確かに飛び出して行った。
だって俺、世界がめっちゃ広いこと知ってるもん。風が気持ちええことも知ってるもん。空がめっちゃ高いことも、青いことも、知ってるもん。で、世界は敵が多いことも知ってる。カラスやろー? ネコやろー? ニンゲンやろー?
せや。
空にな、カラス飛んどってん。で、見つからんように陰におってん。でもな、陰で待機しとったら、ネコ現れてん。前丸いおっちゃんとこで対峙したやつ。
これはもう、臨戦態勢や。即刻、臨戦態勢入ってん。
様子を伺いつつ、距離、測るやんか。
うん。
様子を伺いつつ、距離、測ってん。
ネコ、全然スキ見せんくてなあ。
とりあえず、距離、測るやんか。
そんなこんなしてたらな、ネコの向こうから、ジャリ、て音聴こえてん。思わずそっち見そうになったけど、目ぇそらしたらやられるのんわかっとったから、耐えてん。
で、距離、測るやんか。
したらまた、ジャリ、て音聴こえてな。どうやら、ニンゲンの足音らしい。しかもどうやら、近づいてきてるっぽい。
カラスにネコにニンゲンに、さすがにヤバイんちゃーん。
そう、思たときや!
ネコ、ニンゲンに捕まってやんのー!! あっはっはー!!
こりゃあもう、天は俺の味方や! くらいのノリで逆方向に駆け出すやんか。
したら……、そっちにもおってん、ニンゲンが。
ていうかシマモトタイチョーが。気づいたら捕まっとったわ。
なんならネコ捕まえたん、サナダタイチョーやし。
なんなん?
なんで二人この時間に一緒におるん? めったに一緒におらんってか、たまに一緒におっても、朝ちょろっとだけやんか。なんで真昼間に二人ともおるん?
なあ?
なあ??
なあってば! 俺を気にしろ!!
ガッシャンガッシャンガッシャンガッシャン
ぅお。お前に用は無いねん。でっかい目ぇしよってからに。
ガッシャンガッシャンガッシャンガッシャン
お前でもないねん。ひょろ長い図体しよってからに。
ガッシャンガッシャンガッシャンガッシャン
お前でもないねんて!
……お前、ずっと気になっててんけど、顔になんか付いてんで? いや、耳んとこからひっかかってんなぁ。邪魔やないん、それ。
……、ちゃうわ。お前やないねんて。
俺が用あるんは、サナダタイチョーとシマモトタイチョーやねんて!
……。
作戦変更や。反復横跳びじゃ埒があかん。
用があるんは、サナダタイチョーとシマモトタイチョーやからな。とりあえず、綺麗好きシマモトタイチョーは、散らかしゃ片付けに来るやろう。うん、俺様相変わらず賢い。
とりあえずまずは、水やな。
ガッシャーン!
……どや? シマモトタイチョー、水、ひっくり返ってんで。掃除。掃除せなあかんで。
……。
水だけやったらダメなん? しゃあない。じゃあ、次は……。どれにしよ。牛乳は最後までとっとくとしてー。ひまわりの種と、タマゴボーロ半分にしたようなやつ、どっちにしよ。……。ひまわりの種にしよ。殻むくん面倒やし。
ガッシャーン!!
ほら、シマモトタイチョー。ひまわりの種までひっくり返ってんで。殻剥いたやつと剥いてないやつがごっちゃになってんで。分けな。片付けな。掃除せな!
……まだダメなん?
ていうか、そこ三人。邪魔や。シマモトタイチョー見えへんやんか。てことは、シマモトタイチョーからもこの有様が見えへんやんか。どけや。
何や。指突っ込んできて。……噛んだれ。
ガブ
あ、どいた。
あ、シマモトタイチョー来た。
あんな、俺な、サナダタイチョーにも用あんねんか。呼んできて。
って、俺んとこ来たんちゃうんか!
ええやん、そんな目ぇばっかでかいやつのこと構わんでも!
〜〜〜〜〜!
なんなん、ここんやつら! 俺に興味ないわりに、こっから出さしてくれへんし!!
みんな嫌いや!! ……最初っから好きでもないけど。
