あかん

 

 あー……あかん。

 嶋本は何度目かのため息をついた。
 せっかくのオフなのに何もやる気が出ないのだ。せめて原因が分かればどうにかできそうなのに、原因に心当たりが無い。いや、厳密には心当たりはあるのだ。だが、今まではそれが原因でやる気が出なくなったことなんてないから、原因にはなり得ない。そう考えた。

 たったの一日、真田さんに会われへんだけやんか。

 というのは、前回は3日間会えなかったのだ。その穴を埋めるかのように電話やメールは増えたが、それは今回だって同じこと。
 明日帰ったらそっちに行くよ。なんてメールが来たのも、ついさっきのこと。第一、別れたのが30分も前のことではないのだ。
 朝少し早く起きて朝食を準備して、起こしてからも甲斐甲斐しく世話をして、一緒に朝食をとって。そして、玄関先で見送ったのだ。じゃあ、行ってくる。なんて言われて、いってらっしゃいと言った。真田が直行の時の普段の光景だ。

 なんでこない寂しいねやろ。

 昨日は当直で、仕事が終わると二人は嶋本の家で過ごした。一昨日は準待機で、真田の家で過ごした。その前日は48時間当直開けの休日で、やはり真田宅で過ごしていた。

 あー……。5日間ずっと一緒におったんやな。5日間は初めてかもしれん……。やからかな。

 メールの返事は、「待ってます。」にしていた。決して本心じゃないなんてことはなかったが、こんなにも的確に想いを表しているとは思いもしなかった。
 何も手に付かない程待ち遠しいなんて、呆れられやしないだろうか。そんな不安にかられた瞬間、携帯電話が鳴った。慌てて手に取れば、メールではなくて電話。ディスプレイには、真田甚の文字。

「もしもし」
「ああ、嶋本か」
「どないかしたんですか?」
「いや……なんと言うか」
「?」
「どうしよう。酷く、寂しいんだ」

 思いがけない言葉に、嶋本は吹き出す。それに動揺する真田の息遣いが伺えて、嶋本は慌てて否定する。

「いや、ね。俺もそう思てたとこなんです」

 同じ思いをしただけの事実が、こんなにも愛しいなんて。

「あんな、真田さん」
「ん?」
「できるだけ、早よ帰ってきてくださいね。待ってますから」
「うん」

 あー……あかん。

 こんなんで真田さんと別の隊になったときやってけるんかな。

(おわれ)

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