「あのね、」
 特救隊に入ってきたとき、嶋本は驚くくらい丸くなっていた。それでも新人の中ではずば抜けて生意気だったけれど、発せられる関西弁よりも、その落ち着き方に驚いた。
 だけど、一番驚いたのは。
 きつく、汚らしく聴こえる関西弁の中に、時々可愛らしい言葉が混ざっていること。ほら。今みたいに。

 あのね。

 その音は、まるで幼い子供が発したようにやわらかく、温かく。
そして次の瞬間には冷たくなる。
「聞いてます?」
 それが楽しい。ずっと聞いていたくなる。
「俺行きませんから。黒岩隊長によろしく言うといてください」
「じゃあ、俺も行かない」
「はぁ??」
「二人で、別の所に行こう」
「いやいやいやいやいや。意味わかりませんから」
「二人で話がしたい」
 大人数で飲みに行くとなれば、嶋本はせわしなく動き回るから、ろくに話ができない。だけど二人ならば。ずっと聞いていられる。
「あのね、真田さん」
 次は、幼い子供に話しかける大人の音で。
「それ、ただのわがままですよ」

 ほら、もう鬼軍曹の声。

 

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