幸せの天使
しとしとと雨が降る、夕方。雨雲は僅かに陽を通し、オレンジ色の筋を伸ばしている。なんとなくアンニュイな気分になるけれど、特殊救難基地にそんな様子は伺えない。
と、思っていたら。
はぁ……と、聞き慣れない憂いを含んだため息が聞こえてきた。
アンニュイ――
「真田さん、ため息はあきませんよ」
その声に真田は、はっと顔をあげた。その先には、愛しい人。真田は自然と笑顔になる。
「ああ、すまない」
すると嶋本は無邪気に言った。
「ため息ついたら、幸せの天使が死ぬんですって」
「幸せの天使?」
「ええ。友達が言うてました」
「そうか、それはいけないな」
「そうですよ。だからため息はあきません」
生真面目に返す真田に、嶋本は得意気に返した。
「だが大丈夫だ」
「?」
「俺の幸せの天使は、ちょっとやそっとじゃ死なない」
「……はあ。そうなんすか?」
「嶋本は、ちょっとやそっとじゃ死なないだろう?」
「はい。……って、ぇぇ!?」
暗に、俺の幸せの天使はお前だ、と言ったその言葉に、嶋本は急激に頬を赤く染めた。
そこへコーヒーを持ってきたのは、高嶺だ。高嶺はコーヒーを渡し様、穏やかに言った。
「私の幸せの天使もシマですよ」
「な……!!」
「俺の……俺の幸せの天使は、ここにはおらへん!!」
(おわれ)
