真田家はいつもにぎやかだ 3
夜8時半。あれから盤と星野も進次の入学祝の夕食にお呼ばれして、今日はもうお開きになった。
玄関で、皆で黒岩親子を見送る。が、進次が靴を履き「今日はご馳走様でした」と言ったところで、遂に兵悟がごね出した。兵悟は進次の手をとり放さない。
「帰っちゃヤだ! まだ遊ぶのー!!」
すると盤も「グンソー、まだ遊ぶったい!」と言って聞かなくなった。星野は複雑そうな表情で俯いている。
「すまんなぁ。もう帰らなあかんねん」
進次が自ら断りを入れるが、言うことを聞かない。どころか、兵悟は地団駄を踏んで泣き出した。
「いやだ! まだ遊ぶの!! 一緒にいるのー!!」
「そうばい! ずっと一緒におるったい!」
今日はもう十分遊んだでしょう、と高嶺があやめるが、二人はまったく言うことを聞かない。
高嶺は一つため息をつく。
「お兄ちゃんのことが好きなら我慢しなさい!」
すると二人は、ピクリと動きを止めた。
「お兄ちゃんのこと、好きでしょう?」
「うん!」
「オイなんか大好きやもんね!」
「なんだよ、おれだって大好きだよ!」
また言い合いになる前に、高嶺はもう一つ聞いた。
「じゃあ、困らせたくないよね?」
「うん」
兵悟はわけがわからないままうなずいた。しかし、盤は正しく理解した。「グンソー困っとーと?」
嶋本は高嶺の様子を伺ってから答える。正直に言ってしまって構わない様だ。この子達は、既に人のために我慢することを覚えているのだろう。
「んー、そやなぁ。俺、明日学校やしなあ」
言うと、二人は「わかった!」と返事をした。その様子に高嶺もほっと胸をなでおろした。
しかし――
「学校無かったら良かっちゃね?」
「じゃあ、次いつ遊べる?」
二人は進次と遊ぶことを諦めてはいなかった。
次なんて、ない。進次は中学生で、部活に勉強に遊びにとこれから忙しいのだ。しかし、その場しのぎで約束しても、到底反故にはできないことも検討が付いた。兵悟はともかく、盤が賢いことを進次は今日一日で悟っていた。きっと盤は約束の日を忘れないだろう。進次はそう推測した。再び高嶺に助けを求める。しかし高嶺も困ったような顔をしていた。そこで甚に目をやれば、甚は理解したのか、ひとつうなずくと目の高さを子供達に合わせた。
「進次君は中学生だ。忙しいんだよ。だから次いつ来れるかは、わからないんだ」
進次は内心「初めて父らしい姿を見た」と関心した。が、それは大きな間違いだった。
「だが、きっとすぐ来てくれるよ」
そして、進次の方を向いて微笑んだ。
「そうだろう?」
そうなんですか?
甚の口から飛び出してきた予想外の言葉に、流石の進次も口をつぐんでしまった。そして子供達はその言葉にきゃっきゃとはしゃぎ出した。
「絶対、また遊ぼうね!!」
「早い来てね! グンソー」
もはや断れない空気に、進次は「はぁ」と気の抜けた返事しかできない。しかしそんな返事でも、甚は満足そうにうなずいた。
「いつでも来てくれ。待っているから」
