真田家はいつもにぎやかだ 2
皆でリビングでプリンを食べると、子供達がはしゃぎ出したので大人たちはダイニングへとおいやられる形になった。大人の話はつまらないので、少し迷ったが進次はリビングで子供達の相手をすることにした。しかし兵悟達には、中学に上がったばかりの進次も十分大人に見える。盤は進次の自己紹介を思い出して、しおらしく質問した。
「グンソーは、なんでグンソーち呼ばれとーと?」
「んん? なんかなぁ、態度がでかくて偉そうやねんて。タイクのセンセに、お前は軍曹か! って言われてん」
「態度がでかくて偉そうやったら、グンソーになれっと?」
「あはは、それはちゃうんちゃうかな」
すると兵悟が不思議そうに「ちゃうんちゃうかな?」と言った。
「違うんじゃないかな? ってことや」
「ちゃうんちゃうかな?」
「おう」
「ちゃうんちゃうかな! ちゃうんちゃうかな!」
きゃっきゃとはしゃぎ出した兵悟を指差して、進次は星野に聞いた。
「俺何かおもろいこと言うたか?」
「ちゃうんちゃうかな」
「ぉお! 星野は賢いなぁ」
その横で盤は、はしゃぐ兵悟に構わず話しかけていた。
「ヒョーゴ君。チャウチャウって犬おっとよ。知っとう?」
「ええ〜? チャウチャウ〜? ちゃうんちゃうかな!」
「おるよ!」
「ちゃうんちゃうかな!」
「ホントにおっとって! ねぇ、グンソー!!」
いきなり大きな声で話しかけられて、進次は多少驚いた。小さい子と言うのは、こんなにも力いっぱいなのか。
「おお、なんやー?」
「チャウチャウって犬、おるがね!?」
「あ〜。おるで。おるおる!」
「ええ〜。本当にいるの!?」
進次の言葉に、兵悟は急に目を光らせた。
「おるで〜、チャウチャウ。もっふもふしてんねん」
「ちゃうちゃう! もっふもふ!!」
その兵悟の反応に、盤は突然不機嫌になる。自分の言葉を信じてもらえなかったことが気に食わなかったのだろう。
「盤何ふてくされてんねん」
「ふてくされとらんもん」
頬をぷっくりと膨らませて、盤は言う。この子はなんだか、我を通す所が変だ。
進次は盤を手招いて、こっそりと耳打ちした。すると盤は嬉しそうに、大きな声で「ちゃうちゃうちゃう!」と言った。その声に兵悟はきょとんとする。進次は笑いをこらえながら、「ちゃうちゃう。あれはチャウチャウちゃう」と言った。盤には最後の「ちゃう?」のアクセントが難しかったらしい。それでも兵悟は、興味深々にこちらを見てきた。その様子に盤は満足そうに言った。
「ちゃうちゃうちゃーん!」
すると状況を把握した星野までが入ってきた。
「チャウチャウちゃうんちゃうん?」
「ちゃうちゃう」
進次は、はたから見たら兵悟を仲間外れにしてるように見えるのではないかと心配になったが、兵悟がかわらずキラキラお目めでこちらの様子を伺っているので気にしなかった。
一方ダイニングでは、大人達の「つまらない話」は終わっていた。かと言ってわざわざ進次が入るような話題でもない。何故ならば、進次のことが話題になっているからだ。
「面倒見が良いですね」
高嶺が感心したように言う。
「ありゃあ、面倒見が良いっつうより、こっちで話す方がつまらねぇとふんだだけだろ」
「でも、どちらも嫌ならどちらにも入らないはずです。そういう子でしょう?」
「っはは。買い被りだ。お前は昔っから進次好きだよなぁ」
「可愛いですからね」
するとそれまでは聞いているだけだった甚も賛同した。
「確かに、可愛い」
しかも力強い。流石の黒岩も少し驚いたようだ。
「お、おう。そうか?」
「ああ、非常に可愛い」
「……まあ、お前がそこまで言うならそうなのかもしれねぇが……」
なんだか犯罪の臭いがするな、とは言えなかった。黒岩にはなんだかリアルに想像できてしまったのだ。
「でも本当に、良い子に育ちましたね。幼い頃はわんぱくだけが取り柄のような子だったのに」
「いや、あの子はずっと可愛い」
「あーあー、くすぐったいからもうやめてくれ。そんなに気に入ったんなら、これから子守にでも来させればいい」
