6/1 RE・SHIMAX!! にて配りそこねたもの
シマリス(仮) ジンジン編
ついにニンゲンに飼われるのだとわかって、俺はとにかく、見世物でなくなることにせいせいした。ただその喜びだけを胸に連れられた場所は、思っていたよりもニンゲンの多い場所だった。しかし、それだけではなかった。
シマリスがいた。
ペットショップにも何匹かいたが、特に心惹かれることはなかった。しかし、そのシマリスは違った。
ガシャンガシャンと行われる反復横跳びが、小さな体に似合わず力強い。
行く先を見つめる目がキリリとしていて、きっと何か強い意思があるのだろう。
俺が入っているケージが隣に置かれると、ようやくそのシマリスは反復横跳びをやめてこちらを見た。
近くで見ると、より小さい。しかし、何か、気高さのようなものを感じた。顔に入っている縞が力強くて綺麗だからかもしれない。
とにかく俺は、一目でそのシマリスに惹かれた。
「お前、エゾリスやろ?」
強気なもの言いだった。しかし、とても似合っている。
「どちらかと言うと、キタリスだ」
そう答えれば、きょとんとされた。
「エゾリスちゃうん?」
「エゾリスと言う名で売られていたから、エゾリスで良いのだろうが。……本来はキタリスだ」
「ふぅん」
社交辞令で話しかけてきただけなのか、俺への興味が失せたのか、シマリスはガリガリとケージに付いている何かをかじり出した。
表情がくるくる変わって、感情が明確に表に出る。俺とは全く別のタイプだ。
それにしても。
興味のあるものが、自分に興味を抱いてくれないというのは、こんなにも気に入らないものだったのか。ペットショップで、俺の前からつまらなさそうに去っていったニンゲン達の気持ちが、今ならわかる気がする。
「何をしている?」
俺は半ばむきになって聞いた。すると案外、素直に言葉が返ってきた。
「んん? こん針金食いちぎろう思て」
ケージに付いているのは針金らしい。それにしても「食いちぎる」とは。まさかその針金を食う気はないだろうが、いったい何がしたいのだろう。
「なぜだ?」
「なんでってそりゃあ、だっ……。こっから出てくためやん」
『だっ』……? ここから出て行くという意味の言葉を言いかけたのだろう。……脱出、か? なぜ、言い換える必要があったのだろう。
……それを聞くのは野暮というものだな。
それよりも気になるのは、ここから出て行く理由だ。
「なぜだ?」
「いや、やから、こっから出てきたいねん」
シマリスは面倒そうな表情になった。
おっと、思考の続きのみを発言しても伝わらないな。
「……なぜ、ここから出ようと思うんだ?」
これで聞きたいことが伝わるだろう。
しかしシマリスは難しい顔をして何か考え込んだ。
……これ以上分かりやすく聞けと言うのか?
これならどうだ?
「せっかく会えたのに、なぜ出て行くなんて言うんだ? そんな寂しい事を言うな」
そして、伝わったらしい。シマリスは何やらもごもご言い出した。しかしすぐに、何か決心したような顔つきになった。そして、
「ほんなら、一緒に、居るか……?」
なんて、嬉しいことを言ってくれた。
と、思いきや。
「〜〜〜〜〜〜〜〜なんて言うと思たら大間違いやで、こらー!!!」
と、前言撤回された。
こいつといるのは楽しい。
なんとしても、一緒にいたい。
「では、俺がそちらへ行こう」
言えばシマリスは、ふいと横を向いた。
おわり
シマリス(仮) 13とリンクしてます。
