ロボと心と愛のカタチ 機救編前編 2
「人使い荒いな、お前んとこの副隊長」
船内を捜索しながら爆発が起こった部屋へと向かう途中、嶋本は言った。
「……適切な判断だと思います」
「どこがやねん。隊長のことわかっとるっつったって、二年以上ブランクあんねんぞ、こっちは。それに、お前もう真田隊五年目ちゃうんか」
「去年は黒岩さんの隊でした」
「うっさい。細かいことはええねん。俺より長く隊長ん傍おったんやろ? 俺絶対役に立たへんで」
その発言に、佐々木は驚いて嶋本を見た。
嶋本はロボットの事を誰よりもよくわかっている。そう信じてきていたし、羽田の基地では今もその話題が出る事があって、ロボットに関しては嶋本にかなう者はいない、そう結論付けられるからだ。
そして何より、羽田にいた頃の嶋本はそう自負していた。それさえも皆が知っていて、その通りだと思っていた。
だから、佐々木には、嶋本の今の発言が信じられなかった。
しかし嶋本は、いたって真面目な顔だ。
さらに嶋本はこう続けた。
「要救助者を発見した際は、指示、お願いしますよ。佐々木さん」
それから三分程で、爆発した箇所に着いた。小規模の爆発とは言え、酷い有様だ。窓や扉が吹き飛ばされ、一部天井が落ち、炎は通路や隣の部屋まで及んでいたらしいことが見てわかる。そこへ、消火活動を終えた一人の隊員が状況を聞きにやってきた。
「そうですか、では我々はあちらを捜索します」
そして結局、特殊救難隊員総出で捜索することになった。
しかし嶋本はその部屋をぐるりと見渡し、動こうとはしなかった。
「電波って、爆発で狂ったりするんかな」
嶋本は言った。
「さぁ……」
気の抜けた返事に、嶋本は思わず佐々木をどつく。
「知っとれや!」
自分だって知らないくせに。佐々木はそう理不尽に思ったが、かつての上司に口答えなどできない。
「何のために俺がお前育ててきてん! 真田隊副隊長にするためやろ?」
「は? そうなんすか?」
「知らんかったんか!? 高嶺が隊長に昇格する時、それは、お前が真田隊副隊長になる時やで。黒岩さんとか、高嶺とかから、何も聞いてないか?」
「……そう言えば、高嶺さんやたら隊長の扱い方とかあしらい方とか教えてくれるなぁとは、思ってました」
「せやろ? ほんなら、話戻そか。なんで俺は電波を気にしたんやと思いますか?」
嶋本は、未来の真田隊副隊長に一つずつ考えさせることにした。
「……爆発が起こってから、隊長と連絡が取れなくなったから」
「そう。そのことに関して、お前はどう考える?」
「隊長が爆発に巻き込まれた、とは、考えられません」
「なんでや?」
「ガスの濃度などから、爆発のタイミングを計算できるからです。何より、この部屋に隊長がいません」
「せやな。なら、どう考えるのが一番自然?」
「自然?」
「隊長、要救助者発見直ちに脱出する、言うとったな」
「あ、その直後に爆発しました」
「うん」
「それから、まだ脱出していない。……安全な場所に避難したか、脱出経路を塞がれたか」
「うん」
「どちらにせよ、この部屋からそう離れていない場所にいる……!」
一つ一つを頭に置いて丁寧に考えれば、難しいことじゃない。
「その通りや」
嶋本はニヤリと笑って見せた。
「……もしかして嶋本さん、捜索にあたる時そこまで考えて、ここに来ようって言ったんすか?」
「まあ、当然のことやな」
「もしかして、まだ考えあったりします?」
「お、それでええねん」
嶋本はやはりニヤリと笑って見せた。
「あるで。あるけど、教えたらん。次は一人で考え」
その言葉に、佐々木は何か言いたそうにしたが、すぐに考え始めた。
しかし、
「…………。わかりません」
「諦めが早い!」
嶋本はもう一度どついた。
「そう離れてない場所にいる。それを踏まえた上で、もう一回考え。羽田に出動要請があってから、これまでのこと、一つ一つ思い出してみ」
その言葉に佐々木は一つうなずいて、また考え出した。
次は根気強く考えているらしい。嶋本は室内を調べながら待った。
そして、
「あ、」
と佐々木が声をもらしたのは、五分程が経過した時だった。
「真田さんの居場所がわかりました。……多分」
「お。どこや」
嶋本は佐々木を振り返った。
「そこ」
佐々木は、嶋本のちょうど後方を指差した。
「天井が落ちたりしてて見えませんけど、向こうに続く扉があります。そこに行くには、扉はそこしかない」
「うん。お前は、ここに来るまでに船の青図見とるもんな」
「はい。それから、あっち」
次は、嶋本から見て左にある通路を指差した。
「電波が遮られる部屋があります」
「うん。そこにおるんやったら、連絡がつかへんのも考えられるな」
それから二人は高嶺と連絡をとった。落ちた天井の撤去等、二人でするには時間が掛かりすぎる。他の隊員達にそちらをまかせ、二人はもう片方の部屋へ行った。
しかしそこは空振りに終わった。
その後瓦礫に埋まった扉をようやく掘り起こし、奥へと捜索範囲を広げた。
