ロボと心と愛のカタチ 機救編前編 4

 


 その後女の子は病院に搬送され、特殊救難隊も羽田へ戻ることに、は、ならなかった。基地長から、明日朝一で戻ればいいと連絡があったらしい。
「それで、なんで俺が接待せなあかんねん」
 嶋本は高嶺に言った。しかしそれには真田が答えた。
「基地長に、嶋本君と話をしておいで、と言われたんです。いつもの調子で返事をしてしまいましたが、嶋本さんの意向が無視されていますね。申し訳ありません」
「……あー、基地長命令でしたか」
 嶋本はぼりぼり頭をかいた。
「それで、どこへ連れて行ってくれるんですか?」
 高嶺が聞いた。
「うちや」
「うち? シマの部屋?」
「せや」
 だって、ロボットが一緒だから。飲食店、特に居酒屋は、店員が目を光らせて客の様子を覗っているから、一人だけ食べていない人物がいたりしたら、すぐに気付かれてしまうのだ。店員も、気づいたからといって特に何もしないだろうが、そんなのお互いに気が悪い。
「たこ焼き、お好み焼き、焼きそば。さしずめ粉もんパーティーやな。スーパー寄るから、他に食いたいもんあったら入れや」
「もしかしなくても、準備、手伝わされますね」
「あたり前田のクラッカー」
「……」
「ぅーわー……。懐かしい、東京の空気」
「……空気とかじゃなくて、スベってるんだよ」
「……わかっとる」
 そして、狭い部屋に大の大人の男七人が詰まった粉もんパーティーが始まった。お好み焼きは高嶺に、焼きそばは佐々木にまかせて、嶋本はたこ焼きを担当する。もちろん、焼き方の説明はかかさない。次からは他の者に焼かせる寸法だ。
 あとは焼き加減を見てひっくり返すだけ。説明がそこまで来ると、嶋本は本題に入った。
「そう言や、真田さん。基地長は何を話してこい言うてたんですか?」
「話の内容については何も言われていません」
「……そうですか」
 本題は一瞬で終了した。
「ところで、その丁寧語やめませんか。みんなに話すみたいに砕けてくれた方が、俺は楽なんですけど」
 その言葉に、真田は高嶺を見た。高嶺が軽くうなずいて見せると、真田は「わかった」と返事をした。
「ほな、何話します?」
「そうだな。……、嶋本さんは、」
「嶋本でええです」
「……嶋本は、なぜ俺が女の子に初めに歌った歌がわかったんだ?」
「だって真田さん、あれしか知らへんでしょ?」
「それはそうだが……」
 真田が答えたところで、他の隊員が入ってきた。
「俺、真田さんが歌えることも知りませんでした」
「私も知りませんでした」とは高嶺。佐々木は、賛同するように首を縦にふった。
「みんな、知らんかったん?」
 聞けば、五人全員が頷いた。
「知らなかったんですって」
 嶋本は呆れたように真田に話を振った。
「皆が知らない事を、なぜ嶋本は知ってる?」
 真田のその問いには、高嶺が答えた。
「シマは三年前まで、三隊副隊長をしてたんですよ。多分、その当時も今も、隊長の事ならシマが一番よくわかってる」
「道理で」
 真田は感心したように言った。
「だから知ってるし、皆とも仲が良いんだな」
 そして、「そうか……」と呟いた。その様子はどこか寂しそうだったが、誰もその事には触れなかった。
「なんで隊長は嶋本さんを覚えてないんですか?」
 新人隊員が嶋本に聞いた。しかし真田が答えた。
「その方が良いからだろう」
 嶋本は頷いた。新人隊員は眉根を寄せて、いまいちわからない様子だ。
「俺が嶋本のことを知っていると、何か不都合があるのだろう」
「その通りです」
 答えた嶋本は笑顔で、声も明るかった。
 新人隊員がこれだけで「ふぅん」と話を終わらせたのは、そんな嶋本につられるように、真田が笑顔になったからだ。
「そろそろかな」
 嶋本はたこ焼きをひとつ、ひっくり返して見せた。コロンと綺麗に焼けている。
「おお〜」
 歓声が上がった。
「はい。後は慣れや」
 言って嶋本は、キリを渡す。キリを渡された者は勇んで挑戦したが、一つ目はぐちゃぐちゃになって終わった。
「お前それ食えよ」
 嶋本は言い捨てると、缶ビールを手にたこ焼きゾーンを抜け出した。

 

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