ロボと心と愛のカタチ 特救編後編 2

 

 新隊になってから一ヶ月。嶋本はあることに気が付いた。佐々木は真田を頼らないし、真田は嶋本以外の者を滅多に頼らないのだ。
「嶋本、ちょっと良いか」
「嶋本さん、これなんですけど」
 そう同時に話しかけられ、嶋本は確信した。
 なんか自分の仕事がスムーズに進まへん思てたけど、絶対これや。
 嶋本はがっくりとうなだれ、問いただす。
「隊長、それは他の者では分からんことですか? 小鉄も、それは俺やないとあかんのか」
「……」
「いや」
「隊長、隣が高嶺ですやん。佐々木も、わざわざ俺んとこ来るくらいやったら、隊長に聞けばええやんか。隊長のが席近いねんから」
「わかった」
 そう言って踵を返したのは、真田の方だった。嶋本は真田にこそ細かく説明したかったのだが、しょうがないので後回しにした。小鉄にも、大事な話がある。
「小鉄、用件は急ぎか」
「いえ」
「ほんなら、ちょお来い」
 嶋本はおもむろに席を離れた。佐々木は慌てて後を追う。
 たどり着いたのは会議室。嶋本は一番奥の椅子に腰を落ち着け、佐々木を正面に座らせた。差し込む日差しが暖かい。嶋本は横向きに座りなおして足を組み、右腕を背もたれに置いた。右半身がじんわりと温まってくる。
「どや。もう慣れてきたか、一ヶ月経ったけど」
「まぁ……」
「そうか。隊長には?」
「は……?」
「隊長には、まだ慣れんか?」
「……」
 なかなか答えない佐々木に、嶋本は顔だけを向ける。いつの間にか佐々木は下を向いていた。関西弁はきつく聴こえるらしいので、あくまでやんわりと言ってみせる。
「どないやねん。なんか言えや」
「……慣れるも何も……」
「なんや?」
「……なんで、皆ロボットについていけるのか。理解できません」
「……それは、隊長を信頼できんてことか」
「……」
 嶋本は沈黙を肯定と受け取って、姿勢を正した。語気も強める。
「小鉄、お前もう来んでええわ」
「え?」
 勢いよく顔が上げられる。嶋本は佐々木を真正面から睨み付けた。
「お前は今、隊長だけやない。特救隊を侮辱した。潜水士辞めてまえ」
「え……」
 視線が泳ぐ。嶋本はそれを確認すると、ふっと表情を戻した。
「お前、一人前にそんなこと言うてるけど、この一ヶ月理解しようと努力してへんかったやろ。……ゆっくりでええから。仕事のことで話したないんやったら、休憩時間でもええし。一回何か話してみ」
「……」
「お前なあ、考えてもみ? この先お前が真田隊副隊長やる可能性あんねんぞ? それやのにずっと今んままでおるつもりか?」
「いや……」
「どんだけ不器用やねん。何も二人で飲みに行け言うてるわけちゃうねんで」
「……」
「今日は良い天気ですね、とかでええねん。隊長、話題膨らますん、お前より上手いわ。びびるで」
「……」
「ええな」
 そうして嶋本が話を終わらせようとしたとき、佐々木が口を開いた。
「そんな会話が、何になるんすか」
「ああ?」
「相手はロボットですよ。馬鹿らしくないですか」
「どういう意味や?」
「……」
「それで現場で意思疎通できんかってみい。皆を巻き込んで死ぬだけやぞ」
 次こそ嶋本は立ち上がり、会議室を後にした。

 

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