ロボと心と愛のカタチ 特救編後編 31

 

 星野の特殊救難隊最終日。交通事故の救助活動の表彰を終え昼休憩に入ると、石井が一人ぽつんとふてくされた様子で昼食をとっていた。
「不味そうな顔で食うなぁ」
 嶋本が正面に腰掛けて覗き込むと、石井は心底嫌そうな顔になった。
「ほっといてください」
「何ふてくされとん」
「ふてくされてなんかおりません」
「それがふてくされとる、言うねん」
 石井は答えずに飯をかき込んだ。
「どうせ星野がらみやろ」
「……まあ、星野君が悲劇の主人公んごつなっとうとは気にくわんけど、」
 口にたくさんのご飯を詰めたまま石井は答えた。そうしないと表情を誤魔化せないことは、嶋本には容易に予想できた。
 まったくこいつは可愛くない。
 だから放っておけない。
「気にくわんのは、皆がお前を非情みたいに言うことやろ」
 その問いに、石井は咀嚼をすることで答えない。図星なのだろう。石井は、分かりにくいようで、分かりやすい。
「お前は間違うてへん」
 石井は咀嚼を続ける。
「俺も、真田さんも、同じ判断をした。だから、お前は間違うてへん」
 その言葉に、石井は嶋本の目をみてしまった。慰められる気なんてなかったから、そもそも、慰められるような事もないから、まともに対応するつもりはなかったのに。
 石井はご飯を飲み込むと、呟いた。
「オイはみんなと違て情に流されるようなことはありませんからね」
 そして、自嘲するような笑み。
「お前、」
 本当はあの輪に加わりたいんだろう、などと聞けば、必死に否定するに違いない。もしかしたら怒りさえするかもしれない。
どこまでも素直じゃない。
「笑うの下っ手くそやなぁ」
「は?」
「真田さんのがうまく笑う」
「え、真田さんて笑うとですか」
「笑う笑う」
 言いながら嶋本は立ち上がった。これだけ持ち上げて、大好きなロボットの情報を一つ与えた。多少機嫌は直っただろう。
「プログラムで笑てるのに、それはもうお前なんかより綺麗に、タイミングを逃さずきちんと笑う」
「へぇ……」
「真田さんの笑顔、見たいやろ」
「そら見たいです」
「ほんなら精進せえ。笑顔が見れるだけやない、褒めてもらえる」
 言いながら嶋本は、石井の頭をぐりぐりなでる。
 石井は嫌そうな顔になったものの、予想外にも大人しくなでられている。一人っ子だからか、どう対処すれば良いか分からないようだ。
「子ども扱い嫌やったら、別に振り払っても構わへんぞ」
 言うと、石井は慌てて振り払おうとしたが、嶋本は逃げるように手を離しドアへ向かった。
「皆どうせ星野にひっついて飯食ってへんねやろなぁ」
 言い捨てて部屋を出れば、弁当箱と箸のこすれる音がかすかに聞こえた。

 

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