ロボと心と愛のカタチ 特救編後編 5
嶋本はまた、ロボットとの接し方がわからなくなった。
ロボットのデータが初期化される前も、何度も分からなくなって、何度も接し方を変えた。
新たな感情を学ばせないために。
これまでに学んだ感情を呼び起こさせないために。
今回は初めから、自我が形成されてしまわないよう気を付けて来ていたつもりだった。そして、以前のような自我の形成は見当たらなかった。しかし高嶺は、ロボットにそれなりの自我があると言った。第三者の客観的な意見だ、きっと正しい。
しかしなぜ、自我が形成されてしまったのか。
隊員達とロボットがぎこちなくしていたって構わないと思って放っていた。ロボットを、他の隊員達と同じようになんて扱ってこなかった。なにより、ロボットに心なんて、自我なんて望まなかった。
真田がロボットであることを忘れたことなんて、微塵もなかったのに。
「なんでやねん……」
家で一人、考える。
これからどうすれば良いか。どうすれば、この愛しいロボットを破棄の道から遠ざけてやれるか。
ベッドでごろごろと考えていると、テレビから『想像力』という言葉が聞こえてきた。
想像力か……。真田さんには関係ない言葉やな――
しかし、聞こえてくる内容がどうも想像力とは異なっていた。気になって体を起こして画面を見てみれば、そこには『創造力』と書かれていた。
モノを作り出す力、か……。
嶋本はそう推測した。この創造力と言うものは、人間に限らず生き物全てが持っていて、誰もが持っている力らしい。しかし嶋本は、まさか、と思った。
結局、想像力と同じやんか。俺、想像力ないもんな――
それでも嶋本がその番組を見続けたのは、そんな嶋本の考えとその番組の構成が、見事にリンクしていたからだ。
では、全ての生き物に創造力がある証拠をお見せましょう。
そんなナレーションと共に、ラットの実験映像へと移った。画面に透明のケージが映し出される。
『ここに、ラットには届かない高さに吊るした餌と、餌から離れた場所にラットが乗れる高さの台があります。ラットには、吊るされた餌を立って取ること、台を押して移動させること、台に乗ることを別々に教えてあります。この3つを組み合わせて餌を取ることは教えていません。では、ラットが餌を取れるかどうか見てみましょう』
ラットは餌に気付くと、迷うことなく餌の方へとかけていった。後ろ足だけで立って両手を伸ばすも、もちろん餌に届かない。ラットはめげずに何度か挑戦したが、諦めたかのようにふらふらとケージの中を歩き出した。そして、台に気付く。ラットは思い出したかのように台に乗り、餌の方を向いた。しかし餌には届かないと気付いたのかラットはすぐに台から降りた。再び餌の下へと行ったがやはり届かず、また台に乗って餌の方を見た。これを何度か繰り返して、ラットはようやく台を動かすことに気付いた。ふらふらと台を移動させ、乗る。しかしまだ餌の真下ではないようで届かなかった。ラットは台から下りると少しだけ台を動かして、再び台に乗った。台はまだ餌の真下ではなかったが、ラットはなんとか餌を取ることができた。
そしてこの実験結果から、生物には新しいモノ(事)を生み出す力があるということが証明された。さらにこの実験をもとに、創造力がどのようにして身に付くかも説明された。
モノを作り出す力やなくて、新しいモノを生み出す力――
嶋本は、そんなもんか、と思った。ならば、真田に自我を形成させない方法も見つけられる。そう確信して、創造力を身に付ける方法を反芻した。
無から有は生まれない。だから、多くの知識を身に付けること。
その知識を反芻して、私生活に役立てること。
ささいなアイデアも逃さないこと。メモに取ること。
そしてそれを、実行すること。
……ん? 結局、真田さんのこと、どないしたらええんや? ……ええわ、とりあえず、知識やな。勉強しなおしや。
