なリス 14

 

 では、俺がそちらへ行こう!
 な〜んて格好良くキメたエゾリスさんだかキタリスさんだかは、宣言直後にゴリラ達に囲まれて、ケージから出るに出られへんようになってもた。
 ゴリラ達を見て、こっちを見て、きょろきょろしとる。
 ぷふふっ。格好悪ぃ〜!
 ……しっかし、こいつら、俺には目もくれへん。どないやねん! 昨日まではうっといくらいべたべたしてきよったやんか!!
 ……。
 いや、俺間違うてる。間違うてるで、俺。
 これが今まで望んできとった状況や〜ん!
 今! 今こそ! 脱出のチャンスやん!! 今行かんと、いつ行くん!
 よっしゃ、脱出や!!
 …………。
 ガリガリガリガリ……
 ガリガリガリガリ……
 しつっこいな、針金。
 ガリガリガリガリ……
 いい加減切れえや、お前。
 ガリガリガリガリ……
 いやいやいや、いい加減諦めてくれてええねんで、針金。
 ガリガリガリガリ……
 なんやろな。外っ側は簡単にいけてんけどな。
 ガリガリガリガリ……
 …………
 ガリガリガリ、
 ……
 ガリガリ、
 …………。
 俺の歯ぁが悪なりそう。
 ……牛乳飲んで気合入れなおそ。
 ゴクゴクゴクゴク
 っあー! 美味い! 牛乳って、なんでこない美味いねやろ!!
 っし! やる気出てきた! やったるで〜!!
 ガリガリガリガリ……
「チマ」
 なんやねん。俺今いいとこやねん。
 ガリガリガリガリ……
「チマ」
 何べんも呼ばんでも聞こえてるわ。用件はなんやねん。
 ガリガリガリガリ……
「お前、チマって言うんだろう?」
 なんやねん、今さら名前の確認かいな。
 ガリガリガリガリ……
 って、ん?
「お前か。エゾリスさん家のキタリスさん」
「違う。エゾリスの名で売られていたキタリスだ」
 ガリガリガリガリ……
「なぜ、お前の方にはこんなものが付いているんだ?」
 キタリスは針金に手を乗っけてそう言った。
 ……ん? なんで、隣に越してきたはずのコイツが、真正面におるん?
「いやいやいや、俺が聞きたいわ! なんでお前は出れてるん!?」
「ん? ここを、こう、鼻で持ち上げて……」
「ちゃうやん! そんなん、俺にもわかってる! お前のケージには針金……。付いてた形跡ないな」
「ああ。……これがある限り、俺はそちらへは行けないな」
 言うとキタリスは、見るからにしょんぼりした。……って、お前がしょんぼりするとこちゃうやん。しょんぼりしたいのはこっちや!!
 ……あーあーあー、せっかくの耳毛も、耳ごと垂れたんじゃどうしようもないな。
「なんでお前がしょんぼりするねん。せっかくの耳毛が台無しやで」
「…………」
 なんなんこいつ、人んことで勝手にしょんぼりしとる上に、慰めても無視かいな! 俺がしょんぼりできひんやんけ!!
 ああもう、ほんま面倒臭い。
「……方法あんで」
 そう言うと、キタリスの耳毛がふわりと揺れた。……てか、耳毛しか揺れへんって、どんだけ反応小さいねんこいつ。
「ニンゲンな、ケージ掃除するとき、針金外してこっからいろいろやってんねん。やから俺らにも針金外せる!」
 するとキタリスは顔を上げた。
「ならばなぜ、今お前は針金を外せない?」
 ぅうわ、こいつ! しょんぼりしたと思たら、次は揚げ足取る気かいな! うっとうしい!!
「簡単なことや。俺はケージの中! ニンゲンはケージの外!!」
 言ってやると、キタリスは俺と針金を交互に見た。そして、なるほど、と呟いた。
 ほらな! 俺の言うてること、合うてるやろ!!
「俺は今、そのケージの外にいる。つまり、俺がニンゲンのやるように針金を外せば良いのだな?」
 …………!!
 ほんまや! 今気付いた!!
 こいつ、もしかして、結構使える?
「っ、せや! まさにその通りや!」
 あかん。こいつは大事にせな。
「やからな、今日のところはお前、自分のケージ戻っとり。で、掃除ん時は、しっかり観察するんやで」
「わかった」
 キタリスは耳をぴんと立てて答えた。ええ返事や。
 ほんで、そのまま自分のケージに戻るキタリスを俺はうっかり見送りそうになってもた。大事なパートナーや。名前くらいは聞いたらなな。

「せや、お前、名前は?」
「ジンジン。さっきニンゲン達が付けてくれた」



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