なリス 18
「あ、あかんやん」
嶋本はそう一人ごちて、ケージの前へと移動した。
いつからか、大きなケージに二匹一緒に突っ込まれたリスたちを、嶋本は腕組みをして眺める。
気ままなチマに、ジンジンは根気強く構っている。
そう見える。
少なくとも、チマはジンジン程相手に興味を持っていないように見える。
「チマ」
嶋本が呼べば、チマはひまわりの種から顔を上げた。
「お前はそれでええんか」
聞いて、人差し指をケージに伸ばす。その指に興味を持ったのは、チマではなくジンジンの方だった。
「いやいや、お前じゃないねん」
嶋本はジンジンの鼻先をぽんとつついた。しかしジンジンはめげずに嶋本の指をくんくん匂う。そうこうしている間に、チマは顔をひまわりの種へと戻してしまった。
嶋本は人差し指を引っ込めて、もう片方の手をケージへと伸ばした。
「チーマ」
呼んで、ケージをトントンと叩く。
しかしチマはそれ以上嶋本に興味を示さなかった。
その日嶋本は、休憩時間に真田と連絡を取った。
「あー、もしもし真田さん。少し大丈夫ですか?」
「ああ、どうした」
「リスなんすけど。ケージ一緒にしたの、どうせ真田さんでしょ」
「どうせとはなんだ」
「ちゃんと調べました? あいつらの習性とか」
「いや……、特には。だがリス同士だし、問題はないだろう?」
「あるからわざわざ電話してんすよ」
「何?」
「シマリスは単体で行動するから、同じケージに二匹以上入れたら喧嘩するみたいですよ。下手したら流血沙汰ですって」
「そうなのか?」
「ネットで調べました。酷い喧嘩する前にケージ別々にしときますんで、なおした場所教えてください」
しかし真田は答えなかった。
「真田さん?」
「いや……」
真田は少し考え込むと、「その必要はない」と言い切った。
「話聞いてました?」
嶋本が呆れて聞けば、真田は楽しそうに言った。
「あいつらは案外仲が良いよ」
「はあ?」
「俺たちに似ている」
「はああ??」
そして結局ケージの在り処は聞けず、別々にする必要は無いと言いくるめられ、通話は終了した。
嶋本は仕方なくちょくちょくリスたちを観察していたが、やはりそんなに仲が良いようには見えなかった。良くて、ジンジンからチマへの一方通行だ。
しかしその時は夕方に突然やってきた。
いい加減聞きなれたガッシャンガッシャンとうるさい音が止んだのでケージを見てみれば、二匹は押し車を変わりばんこに使っているらしく、ジンジンがチマに譲ったところだった。と、思いきや、チマは押し車の中ではなく、上に飛び乗ってカラカラと走り出した。さらには、ジンジンが押し車の中に入って走り出した。
ええええ??
嶋本は心の中で叫ぶ。そして、心の中でツッコミを入れた。それ使い方ちゃうやろ、と。
そして冷静になって、昼間の真田の言葉を思い出した。
「あいつらは案外仲良いよ」
いや、うん、まあ、悪くはないんやろな。
そう思ったところで、嶋本はもう一つ真田の言葉を思い出した。
「俺たちに似ている」
……どこが? あれ、俺と真田さんって、こんなへんてこやったっけ。
いや、ジンジンが平気そうに走っとってチマがめっちゃ必死に見えるんは、なんや身に覚えがないでもないけど。……嬉しないな……。
その後、二匹が喧嘩するような事があればケージを別々にするという話になったが、もちろん、そんな日は来なかった。
