なリス 21
「ずっと考えていた」
「は?」
ジンジンはいっつも突然。
「この前、謝らなきゃいけない気がした理由」
いや、それもう終わった話やん。
「俺はあん時の罪悪感の理由考えてへんけど」
「うん。俺はずっと気になっていたから」
「ふぅん」
残念ながら俺はその理由より、こんキャベツ(芯)のが興味あるわ。
こんシャリシャリがたまらんねん!
シャリシャリシャリシャリシャリ……
シャリシャリシャリシャリシャリ……
「いや、今はやめておこう」
え、なんで? 今まで構わんと喋っとったやん。
くるりと踵を返したジンジンの尻尾を慌てて掴む。
「……抜ける」
「知っとる」
「毛の話じゃないぞ。尻尾だ」
「知っとる」
「……」
「話途中でやめんなや」
言うと、ジンジンは申し訳なさそうな顔になった。
「ゴメン」
「は?」
またこのやりとりするん?
「何か謝らなかんようなこと……」
「作業を中断させた」
作業? キャベツ食っとっただけやけど。
「この前は、殻を剥くのを邪魔した。今日は、キャベツを……」
ああ〜、確かに、剥いてる途中の種取られたんはイラッとしたけど、別に種はあるわけやし。そんな気にするようなことやない。て言うか、
「そんなん、ジンジンいつもんことやん」
「うん」
あ、自覚しとった。
「ほんならなんで?」
「この前、チマあれから部屋に引き篭もってしまっただろう? すごく、寂しかったんだ。それで、どうしたら出てきてくれるだろうと思ったら、謝らなきゃ、と思った」
「寂しいて、おまえ」
「また、あんな風になるのは嫌だよ」
ジンジンは恥ずかしげもなく言う。
「ここに来て、チマと出会って、せっかく毎日が楽しくなったのに。チマがいないなんて、嫌だよ。寂しい」
「……」
「ただのわがままなんだ。だから、ごめん」
言うてジンジンはまたしょんぼりした。
……え〜っと、何?
こいつはまた俺に罪悪感を抱かせたいん?
何がしたいん?
ん〜、とりあえず。
「……一匹になりたい時はあるよ。種の殻剥くん、ノッテル時に話しかけられてもぶっちゃけ迷惑やし、種取り上げられたりしたらイラッとする。だから引き篭もる。でもそれは、ジンジンを邪魔に思うわけやないで」
「……」
「ジンジンも、ずっと理由考えとったんやろ? そん時は一匹で平気やったやんか。俺がおったら、考えられへんかったやろ?」
「……」
「やから、ジンジンが寂しくなる必要、ないねん」
……あ、わかってもた。
それでもジンジンが寂しくなった理由と、俺が抱いた罪悪感の理由。
「でも、それでもジンジンは、寂しかってんな」
「……チマ?」
あかん。俺までしょんぼりや。
「それは俺が怒って部屋に引き篭もったからや……」
ちょっとしたことで怒って、ジンジンしょんぼりさせてもたから、罪悪感あったんや。
「俺ん方こそ、ごめん」
あーもう、ほんま情けない。俺んせいやんか。
情けのうて、顔上げられんとおったら、思いがけない言葉が降ってきた。
「ありがとう」
「へ?」
びっくりして顔上げたら、ジンジン、嬉しいような情けないような顔しとった。
「優しいな、チマは」
「はぁ?」
思いっきり変な顔したったけど、ジンジンはもう一回言った。
「ありがとう」
