なリス 22

 


 最近ジンジンの様子がおかしい。
 クルルックルルッて、一日中鳴いとる。しかも結構デカイ声で。
 俺には何の叫びなんかさっぱりわからん。
 そしてたまに鳴き声止んだかと思えば、
「ずっと考えていた」
 それはそれは突然に。小屋の屋根から、なぜだかコロコロの上に飛び移って。……うん。なんて言うか、距離全然縮まってへんで。
 てか、なんやっけ、あれ。しゃぶしゃぶ? ちゃうなー。えーっと。しゃぶ……、じゃぶ……。あ、デジャブ!
 せやせや。
 デジャブ。
「この前、チマが部屋に引き篭もったときに、寂しかった理由」
 え、なに? ジンジンはまた俺をしょんぼりさせたいん?
「……一匹っぽっちにしたからやろ?」
 うわ。言うたらやっぱりしょんぼりなってきた。
「うん。でもそれはチマが言ったじゃないか。一匹でも平気な時は平気だ、と」
 ……そう言や言うたな。
「あー……」
「だけど、やっぱり平気じゃないんだ。チマが傍にいないと」
「……うん。やから、一匹っぽっちやからやろ……?」
 あかん。どんどんしょんぼりなるわ。
「そんな顔をしないでくれ。せっかくの尻尾もしおれてる」
 ほんなら、しょんぼりなる発言をさせんでくれ。
「チマ」
 ジンジンが、心配そうな様子でコロコロから飛び降りた。
 俺にこんな顔させたないんやったら、普通にしてくれ。
「クルルックルルッ」
 ジンジンが鳴いた。
 心配そうに。どこか苦しそうに。
「クルルックルルッ」
 鳴きながら、にじり寄って来る。
 すまん、ちょお、怖い。
 怖い。けど、笑けるのはなんでやろ。
「ど、どないしたん?」
 笑いを堪えて聞く。
 だけどジンジンは答えない。それでもやっぱりにじり寄ってくるのが怖いから、俺も後ずさる。
 クルルックルルッ
 クルルックルルッ
 クルルッ
 壁際まで追い詰められて、鼻先が当たるくらいの距離まで来ると、ジンジンの鳴き声が止んだ。
 そして、何か確信したように呟いた。
「やっぱり」
「ん?」
「チマといると、あまり苦しくない」
「……苦しかったん?」
「うん。……今もまだ、ちょっとだけ痛いけど」
「痛いん?」
 俺は、ジンジンが苦しんでるのん見て笑てたんか。……最悪やな。
「なんで? 最近よう鳴いとったけど、ずっと苦しいん?」
「うん」
「……」
「だけど、チマと話すと痛みが和らぐ。チマといると痛みはちょっとだけ残るけど、途端に平気になる」
「……そうなん?」
「うん。だから、この苦しみは、寂しさなんだ」
 そんなん言われたら、しょんぼりもマックスやわ……。
「すまん……」
「違うんだ。謝ってほしいわけじゃないんだ」
「ほんなら何?」
「この苦しい程の寂しさはつまり……」
「つまり?」
「好きなんだ」
「……何を?」
「チマを」
 ……俺を?

 俺……??

 

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