なリス 27
どれくらい途方に暮れとったんやろ。
だいぶ長い事途方に暮れとったら、シマが来てな。
くそ下らんことしてんちゃうぞ!! って訴えたら、どうやら通じたみたいでな。
タイチョーになんや言うて、ジンジン、戻してくれた。
ジンジンがケージに戻ってきて、俺は、ジンジンが嬉しそうな顔になるより先にかけつけた。
そしたら、ジンジン、嬉しそうな顔になる暇もなく、驚いたような顔になった。
けど、構ってる暇は無い。
俺は、大分長いこと、気持ちを伝えそびれとってんからな!
「ジンジン! 好きや!」
ジンジンは更に驚いたような顔になったけど、構ってる場合やない。
「めっちゃ好きや! びっくりするくらい好きや! 大好きやねん!」
ジンジンの驚いたような顔は、みるみる嬉しそうな顔になっていった。
「もうな、アホみたいに好きやねん! てか、アホやろ!」
するとジンジンは嬉しそうな顔のまま、顔を横に振った。アホじゃないよ、ってとこか。
いや、アホには心あたりあるな。
「……ちゃうねん。俺アホやねん」
「チマ?」
「ほんまごめんやで。俺、ジンジンがどんなに辛い思いしてんのか、全然わかってへんかった。突然ジンジンおらんようなって、やっとわかった。俺、あんな辛いのん嫌や。俺、ジンジンおらな、何もできひん。何もわかれへん。ジンジンおってくれな、俺あかんねん」
「うん」
「ジンジン傍におってくれな、俺、嫌や」
「うん」
「好きや」
「うん」
「めっちゃ好きや」
「うん。俺もチマが大好きだよ」
「……俺なんてアホみたいに好きや!」
ついムキになると、ジンジンは笑った。
「あはは! 俺なんて、一目みた瞬間からチマが好きだよ」
「な……! 俺なんかなぁ、これからもずーっとずーっとずーっと好きや!」
「俺は例え死んでも好きだ」
コロコロ競争でなんとなく思っとったけど、ジンジンも相当負けず嫌いや。まあ、俺も負けんけどな!!
「俺なんか生まれ変わっても好きや!」
「うん。そうだな」
認めた! 勝った!!
だけどコレには続きがあった。
「俺達は、これからもずーっとずーっとずーっと、生まれ変わっても一緒だ」
何やろ。なんや、負けた気分。
これがアレ? 試合に勝って勝負に負けたってやつ?
やけど、
「せやな!」
俺達はきっと、ずーっとずーっとずーっと、いつまでも一緒。
「あれ?」
「ん?」
「そう言や、鳴き声ぴったり止まったな?」
「うん」
「なんで?? 俺が傍におっても、ちょっとは痛かったんやろ? 今は痛ないん?」
「全然痛くないよ。チマが俺を好きでいてくれるから」
「そうなん?? そういうもんなん?」
聞くと、急にジンジンの表情がなくなっていった。
「わからないの?」
声も、突然冷たくなった。
え、俺、そんな悪いこと言った? 酷いこと言った??
「……わかれへん」
「そう。じゃあ、もういい」
言うとジンジンはくるりときびすを返した。
え、もういいって、何?
「ジンジン……?」
わけわかれへん。何?
どうしようもなくて困り果てとったら、ジンジン、またこっちに向き直った。
「ごめんね」
申し訳なさそうに。だけど優しい声で、表情で。
しかし俺には、この流れがさっぱりわからん。次の言葉を待っとったら、ジンジン、俺ん足元にもぐりこんできた。
いや、狭いやろ、そこ。
後ろ足だけで立つと、じんじん、胸のあたりに鼻ん頭をこつんと当ててきた。
心臓にキスされたみたいや。
「この辺り、痛かったでしょ。ごめんね。だけど、それが、切ないということ。好きな相手に想いが届かないということ、好きな相手が自分を想ってくれないということは、こんなにも、痛くて、苦しくて、辛くて、寂しい」
「うん……」
「だけど、大好きな相手の傍に居られるだけで、それは大分軽減されるんだ」
「そうなん?」
「そう。だから、チマが傍にいてくれて、ほとんど苦しくなかったよ」
「そうか……」
「今は、チマが好きだって言ってくれたから、全然苦しくないよ」
まあ、苦しくないならええねん。
……ん?
「もしかして、今の、わざと?」
「うん。わからなそうにしてたから、教えようと思って」
くっそ、こいつケロリと……!
いや、そりゃ、今のでわかったけど!
「なんじゃそりゃ!! 俺、本気で寂しかったやん!!」
「うん。だから、ごめんね」
「もお! あんなん、二度と嫌やで!」
「しないよ。と言うより、できるはずがない。だって俺達、想いが通じてるんだから」
そしてジンジンは、太陽みたいな笑顔になった。
うん。ジンジンにはその顔が一番似合とる!
「やっぱりチマは、その笑顔が一番似合ってる」
