なリス 28
最近過ごしやすくてええわぁ。
「チマ」
……涼しいし。お日さんはやらかいし。気持ちええ。
「チマ」
……これでなぁ。ルームメイトが空気読める奴やったら最高やねんけど。
「チマ!」
「何やねん! 今ええとこやねん!」
「!! すまん。何かしていたのか……」
いや、何もしてへんかったけど。って、ぇえー……
「ジンジン、そこまでしょんぼりすることないやん」
「いや、いいんだ。大した用じゃないから」
……やろうな。ひまわりの種、大事そうに握り締めて。どうせまた俺に、剥け、言うんやろ。
自分で剥け!!
……って言うたら、まあた、耳ショボーン尻尾ダラーンしよるねんでこいつ。
ああ、面倒くさい。
うっかり好きとか言うんやなかった。
……ほんま、あれから、ひっどい。ちょびーーぃっと突き放した言い方するだけで、これや。
「それ剥いたるから、俺のん剥いてくれる?」
ほんで、俺も勝たれへんねん。しょんぼりジンジンに弱い。
「うん」
ジンジンはパッと笑顔になると、手に持ってるひまわりの種を差し出してきた。
ジンジンの笑顔見ると、心臓の辺りがキューってなる。
ああ、好きって面倒臭い。
カリカリカリカリカリ……
いやしかし。
カリカリカリカリカリ……
あったかいし、ゆったりやし。
カリカリカリカリカリ……
まったりやわぁ。
カリカリカリカリカリ……
脳みそ溶けそう。
カリカリカリカリカリ……
いや、とろけそう、やな。
カリカリカリカリカリ……
カリカリカリカリカリ……
!!
忘れとった!
すっっっっっかり、忘れとった!!
殻剥いとる場合ちゃうで!
「ジンジン!!」
呼ぶと、ジンジンはピコンとこっちを向いた。
「脱出! すっかり忘れとった!!」
「そうなのか?」
え、忘れてへんかったん? 俺めっちゃ忘れとったけど。
「じゃあ、やるか」
「へ? 何を? どうやって?」
「脱出を。いつも、シマモトがやっているように」
シマモト?
シマモト……。
!!
掃除ん時な、ニンゲン針金外してケージに手ぇ突っ込んでくるねんけどな、シマモトどないしてると思う? あいつワケわからへんねんで、壁と天井いっきにガポッと上に外しよるねん!
ほんま、初めてん時びっくりしたで! 急にふわって!! 慌てて小屋から外覗いたら、なんかいつもより視界が高いねんもん! で、ぅおー、思てるうちに、ストンて、なんかいつもと違うところに置かれて。
シマモト、そらもう、ちゃちゃーっと片付けと掃除と食いもん補充してくれるねん。
で、また壁と天井とごそっと持ち上げられて、いつもんとこにカポッとはめられるねん。
他んやつらは針金はずして狭いとこから手ぇ突っ込んでちまちまやるから時間かかるねんけど、シマモトのやり方はねぇ、パパッとしててええと思うわ。
……
って、
え? マジで?
「俺らで壁ごとごそっと外そう、言うてんの?」
「ああ」
「できんの? 俺らでできるん??」
「それはわからない。だが、俺たちでは針金は外せないし」
「いや、そら、今んところ針金には手も足も歯ぁも出ませんけども。俺、針金攻略するほうが賢い気がする」
「これまでずっとできていない事をこれからもずっと続けるより、新たな可能性に挑戦する方が賢いと思う」
「だって、壁のサイズ見てみ!? 俺らでどうにかできる気がせえへん!」
「……だが、針金もどうにかできる気がしない」
あかん。俺も結構頑固やけど、ジンジンも相当頑固や。
でもなぁ。壁、四つもあんねんで。
……! これや!!
「針金はいくつ?」
「1つ」
「壁はいくつ?」
「4つ」
「ほら。明らかに針金攻略する方が賢い!」
「壁が4つあるからと言って、4つ全てを外す必要はない」
「?」
「要は、俺たちが出られるスペースを作ることができれば良いんだ」
「ほお」
「……」
「つまり? どうやんの?」
「……」
「……。……! 見切り発車やろ! 見切り発車なんやな!!」
「っ、うまく説明できないだけだ。やるぞ」
言うと、ジンジンは殻剥きかけのひまわりの種をポイと放り出して、ケージの隅っこで何やら始めた。
あああ、なんや、めっちゃ疲れそうで嫌やわぁ。
