なリス 29
壁をごそっと外すべく、ケージの隅でごちゃごちゃやる日々が続いとるけど。まぁ、手ごたえは全くないな。
ジンジンと一緒に同じ隅を攻めてみたり、二手に分かれて攻めてみたりしとるけど。まぁ〜、うんともすんとも言いませんわ。
あまりに手ごたえがなくておもんないから、諦めて牛乳飲もうと振り返ったら、シマモトにめっちゃ見られてて、ちょお、びびった。
なんやねん。
目が合うと、シマモトはケージを指でトントン叩いてなんか言い出した。何を言うてんのかわかれへんけど、掃除でも食いもんくれるんでもないんやったら、ほっといてくれてええねんで。
ぷいと目をそらして牛乳へ向かう。だけどシマモトはトントンと追いかけてくる。
なんなん? 今日はしつこいなぁ。
すると、シマモトはトントンをやめて何やらゴソゴソしだした。そして現れたのは、
チョコや!
何? くれるん? ええの? チョコ、久々やん!
うっかりテンション高なって鼻からつっこんでいくと、ケージの隙間から指で頭を撫でられた。ほんまはあかんねんけど、今回は許したるわ。かわりにそんチョコよこせよ。等価交換やで。
しかしシマモトはなかなかチョコよこさへん。
早よ、くれや。
痺れをきらして手を伸ばすも、シマモトはチョコを俺から遠ざける。
なんなん!
必死になって追いかける。後ろ足だけで立って両手を伸ばす。
ああ〜! こんケージさえなければ一発やのに!!
ぶんぶん両手を振り回すと、シマモトはようやくチョコをよこしてきた。両手でがっちり受け取って。いざ中へ。
……さぁ、中へ。
……、中へ、な。チョコを。入れたいんやけど。
あんな、シマモト。
ええねんで。ええことやねんで。めっちゃええことやねんけどな。
こんチョコ、でかいわ。
いや、嬉しいねんで。小っちゃくせぇとは言わへん。むしろもっと大っきくてええで。
ただな。
向きが、な。
縦に渡してくれんと。こんだけ大きいと、横を縦にするだけでも難儀やわ。いや、普段の俺やったら、余裕でやるよ? でもなぁ ……。
ケージ越しって……。
ケージ越しって……!!
ないわぁ。流石に無理あるわぁ。
なんならチョコ解けてきてすべりよるしな。
笑てる場合ちゃうで! シマモト、お前が何も考えへんから俺が今こんな苦労してんねやろ!
手伝えや!
って、
あああ〜〜!!!!!
ほら! ほらな! チョコ落としてもうたやんか!!
笑てんと取れや!
思いを込めて手をばたつかせたら、シマモトはようやくチョコを取ってくれた。
ものの。
シマモト。お前はアホなんか? アホちゃうやろ! どうせわざとなんやろ!!
なんでまた横やねん! 大っきなおチョコ様は縦によこしなさい!
まったく。しゃあないな。
俺様が、こう、上下に、受け取ったったら、ええんやろ。で、向き、を、
よい、しょ!
……って、一苦労やわ!
抗議する!
おチョコ様を丁寧に下ろすと、俺はシマモトに向き直った。
ケージの隙間から両手を出すと、シマモトは「まだ欲しいんか」とでもいいそうな感じで残りのチョコをごそごそし始めた。
いらんわ!
いや、いらんことないけど! 今はもうええわ!
手をぶんぶん振り回すと、シマモトはチョコを置いて指を近づけてきた。
ここぞとばかりにその指をつかむと、シマモトは何やら嬉しそうな顔になったので。
がぶり。と。
ひと噛みしたった。
慌てて指を引っ込めるシマモトに満足した俺は、ようやくおチョコ様に向き直る。
と。いつの間にかジンジンが作業をやめてこちらに来ていた。
「噛むのはやりすぎじゃないか」
「しょうもないことするシマモトが悪いねん」
「でもお前は、痛い思いなんかしてないじゃないか。シマモトはチョコをくれたのに、痛い思いをした」
何それ。俺が悪者なん。
なんでジンジンがそんな顔するん。
気が滅入った俺は、口に入るだけチョコを詰め込んで小屋にこもった。
チョコはなんだか、いつも程甘くなかった。
