※これは、ドラマチックの派生というか。なんというか。
ドラマチックを既に見た事ある方には1話目はなんら新鮮味がありません。ドラマチックは別に見ていただかなくて結構です(^_^)
一緒に 1
高三の、ちょうど一番ぐれていた時期。少し変わった男が副担任だった。
やたらやる気のある男で、熱血で。だけど、ひとりひとりとわかりあおうとするわけでもなく。
だから、ぐれていた俺も、特別副担任の世話になったわけでもなく。
かと言って、全く影響を受けなかったわけでもなく。
生徒達は、自分のためだけではなく、副担任のためにも頑張って勉強をしようと思った。
俺は、とくに真面目に授業を受けなかったが、副担任はそれで妥協してくれた。
「一度で良いから授業を受けてくれ。興味がわけば、そのまま授業を受け続けてくれて良い。興味を持てなかったなら、寝ても良い。静かにしてくれてるなら何しても良いから、とりあえず自分の席に座っててくれ。そしたら、卒業させてやるから」
「本当に2回目からは寝てもいいんだな?」
俺は念を押して承諾した。授業は丁寧で、熱意が伝わってきた。まだ准教員だったから、教師に夢見てんのかと当時は思った。
極め付けが、
「一緒に頑張ろう」。
事ある毎に言っていた。
「副だけど、一応担任だから。他のクラスの生徒より、やっぱり愛着がある。皆には頑張って大学受かって欲しい。俺も教免取りたい。一緒に頑張ろう。教員試験は9月だけど、絶対受かって、教頭目指してまたすぐ頑張るから。だから最後まで皆と一緒に勉強ができる。頑張れる。最後まで一緒に頑張ろう」
なんでそんなに熱いのかと思ったら、ある日一時間丸まる使って、その訳が話された。
副担任も、高校の時やる気がなかったらしい。ところが、一緒に頑張ろうって言ってくれる子が現れた。その子はよく、自分の目標や夢の話をした。
そして、流されるままに勉強するようになった。
でも、流されてるだけだから夢や目標を見出せなかった。ただ、「何かしなきゃなあ。何かしたいなあ」とは思えるようになった。
とりあえず大学行こう。
そう考えるようになった矢先。一本の電話がかかってきた。
「娘が帰ってこない」
「ここにはいない。心当たりはない」
そう言って切って、次に電話がかかってきたのはどれくらい経ってからだろう。
「海で見つかった。見つかった時には息をしていなかった。事故か自殺かもわからない。見つかったときは、ただ、海に浮いてた」
ショックだった。彼女が死んだ。一緒に頑張ってくれる人がいなくなった。
いや、頑張ったって、何も出来ずに死ぬんだ。頑張ったところで何になる? なぜ頑張らなきゃいけない?
そして何もしなくなった。
受験シーズンになっても何もせず、ある日突然、学年主任に呼び出された。
「ここなら受かる。俺が受からせてやる」
一つだけ提示されたその大学は、今でこそ多少知れているが、当時は名も知れぬ三流大学だった。
「どうせこのまま腐り続けるんやったら、ここに行け。そこで腐り続けてもかまわん。腐り続けて、でも卒業してみろ。三流は三流やから、何の自慢にもならんけど、腐ってんのに履歴書に大学卒業って書ける。ラッキーやろ。高卒と大卒は大分違うぞ。だからとりあえず、ここに行け。もし、大学に行き続けて、したいことや目標を見つけたなら、俺に言ってこい。助けてやる。この大学の教授に友達おるから、面倒見させてやる」
正直、自己主張するのも面倒で。言われるがままに、その大学に行った。
最初はやっぱり何もおもしろくなかった。
夢もなく何もなく、それなのに通っているのは教育学部で。三流大学で、程度が知れてるのに、そこで頑張ろうとも思えずただなんとなく過ごし続けて。とりあえずできた友達は、教育学部だから教育の話とか夢の話とかばかりでやっぱりおもしろくなくて。
でも、友達の話を聞いてるうちに、「一緒に頑張ろう」って言ってくれた子を思い出した。
そう言えば、あいつの夢も教師だったな
すると、つかえてたものが取れたみたいに、自分の中に感情が戻ってきた。
あれ、俺、何してんだろ
こんな、生きてんだか死んでんだかわかんねぇ生活送って
あいつはもう、何も出来ないのに
何、殻に閉じこもって、もったいない事やってんだろう
丁度やりたいことねぇんだから。丁度教育学部にいんだから。あいつの代わりに俺が教師になろう
ああ、ここをすすめてくれた学年主任に連絡しなきゃ
助けを求めるのは、ありがとうって言ってからだ
頑張れる
俺には、目ぇ開かしてくれた人がいる。助けてくれる人がいる。 一緒に頑張ろうって言ってくれた人がいる
俺は、生きて、頑張らなきゃいけない
そんな経緯で、死んだ子のためにも、学年主任のためにも、頑張って教免取らなきゃいけない。
頑張るっていうのは大変なことだけど、助けてくれる人、一緒に頑張ってくれる人がいると、大分楽になる。すごく頑張れる。だから、みんなと一緒に頑張りたい。みんなと一緒に頑張ることで、少しでいいから皆の支えになれたらいい。皆が頑張れる、そんな存在になりたい。
俺はその話を、子守唄のようになんとなく聞いた。
