つづきもの5話目です。

お題37.どうしてこうなった

 

 好きだ好きだと何度も言われて、相手にしなかった。相手にするつもりもなかった。その「好き」がどういう好きなのかを、わかっていなかったからだ。

 だけど、押し倒されて押し付けられた唇が、思いがけず柔らかくて。うっかり拒否する力が抜けてしまってからはもう。
 気持ちが、よくて。
 離れゆく唇を、舌を、追いかけて。もっと、と。思ってしまった。
 体を這う相手の指に驚いて、でも、その時には、自分の方が貪欲に動いてた。
 舌も、そのずっと下も、あちこちが気持ちよくて。
 漏れ聞こえる息遣いが、声が、耳の奥、脳みそまで痺れさせて。
『俺、小鉄さんになら抱かれても良い』
 夕方に聞いた言葉が、蘇って。
 わずかに残っていた理性が、吹っ飛んだ。
 最後までするわけにはいかなかった。一度きりの関係になんてなれるはずがないことなど、容易く判断できたのに。
 濡れた唇、潤んだ瞳、かすれた声、引き締まった柔らかくない体。男相手に、たつなんて。
 悪くないと、思ってしまった。
 いつもは騒がしいのに、大人しく、静かになって。目に涙を浮かべて、それでも笑顔を向けて、嬉しそうに、受け入れるのだ。額に汗を滲ませてまで、痛みに耐えて。全部入ったところで汗と涙をぬぐってやったら、驚いたような顔になって、それも一瞬でくしゃりと歪んで、涙が溢れて。次は自分の涙に自分で驚いたようで、慌ててぬぐって、また笑顔を見せて
「抜いちゃ嫌です」
 と抱き付いてきた。
 可愛いなんて、思ってしまった。だから、それからはゆっくりと。いいところを探して、散々喘がせて。
「小鉄さん、小鉄さん、好きです、好き」
 必死に紡がれるその言葉に、また脳みそが痺れて。気付いたら、終わってた。

 我に返ったところで、時すでに遅く。息を切らし、ぐったりと力の抜けた相手は、れっきとした男で、引き締まった筋肉は見るからに硬そうで、よく、この体に欲情できたものだと。可愛いと思えたものだと。自分の勘違いが、恐ろしくなる。
 そしてもっと恐ろしいことに、勘違いの旨をどう言い聞かせようが、相手はすっかり、俺の恋人になったつもりで。
「照れなくていいんですよ」
 と上機嫌だ。がっくりと項垂れると
「小鉄さん可愛い」
 などと言ってくるものだから。座布団で殴ると、それさえも嬉しそうに。座布団を胸元に抱え込んで、「んふふ」と笑うのだ。
 駄目だこいつ。
 早くなんとかしないと。


つづく

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